家庭の医学

肝臓病について(3)

肝硬変はどんな病気?

日本語からは、肝臓が硬くなって変化した病気だなというイメージが湧きますね。横文字cirrhosisは、ギリシャ語の「オレンジ色」という言葉に由来しているので、肝臓がみかんの皮みたいになった病気と考えればよいでしょう。

つまり、肝細胞の壊死(組織が死ぬ)が進み、その変わりに繊維組織が増えて、肝臓が硬くなってしまい、その機能が衰えてしまう病気です。まずは簡単に説明しましょう。

硬くなってしまった肝臓の内部は、その構造を変えてしまいます。肝小葉という肝細胞の集団が破壊されてしまい、そのかわりに「偽小葉」という結節(こぶのようなもの)がどんどんできあがっていきます。
そして、外見上もなめらかさがなくなり、結節が浮いて見えてでこぼこになります。

偽小葉は、もはや解毒などの肝臓本来の機能をはたせないので、食欲不振や虚脱感、吐き気、黄疸などの症状がでてきます。

また、硬くなった肝臓は血液を流れにくくするので、門脈によって導かれていた胃や腸からの血液が行き場をなくし、門脈圧が亢進します。
その結果、血液が門脈以外の静脈に流れ込むと体のあちこちに静脈瘤をつくってしまうのです。なかでも、おへそのまわりや食道のまわりの静脈に血液がたまりやすくなっています。

食道にできた静脈瘤は、ときには破裂することがあり、これが大量の出血をひきおこすと死に至ってしまいます(静脈瘤破裂)。その他、門脈から逆流してきた血液の血漿が、腹膜のほうへ染み出し腹水貯留をおこすこともあります。
こうなると、医師による適切な処理を怠るとついには昏睡状態(肝臓で解毒されなかったアンモニアが血中にたまり、脳に神経毒として働くと肝性昏睡をおこす)となり、死亡することもあるのです。


ここまで聞くと、本当に恐ろしい病気と感じてしまいがちですが・・・ごめんなさい。
でもここからまた、気持ちをとりなおして聞いてください。

「死に至る病」からの脱却

以前は、吐血や腹水などの非代償期の症状がでてから初めて医療機関を訪れ、肝硬変と診断されることが多かったようです。また、静脈瘤や肝性脳症などの肝硬変特有の症状に対する治療も未発達であったため、診断後は予後不良であったことは事実です。そのためか「肝硬変といわれたら数ヶ月で死んでしまうものだ」というイメージは根強いものがあることも否めません。

実際に、昔ながらに突然血を吐いたり、昏睡に陥ってから救急外来を訪れる患者さんがいないわけではないです。また、進行した肝細胞癌を合併してから初めて医療機関を訪れることも残念ながら少なくはないようです。
しかし、現在では肝機能検査や画像診断が進歩し、また検診などを受ける機会が増えたため、無症状のうちに(代償がきくうちに)肝硬変と診断されることが多くなっており、必ずしも死に直結する診断名ではなくなりました。

また、いったん肝硬変となってしまえば完全に治癒することはありませんが、アルコール性の肝硬変で完全に禁酒ができる例や、ウイルス性の肝硬変でウイルスが消失する例のように、肝臓を傷害する原因を排除できる場合には、長期間にわたって安定した経過を示すこともあります。
もう少し詳しくお話しますと、B型肝炎が原因のものでは、HBVが消失すると肝機能は正常化し肉眼的な結節は消失します。また、C型肝炎が原因の肝硬変においても、インターフェロンが著効した症例で、組織学的に肝硬変が改善するかどうかが検討されています。さらに、アルコール性のものでは、禁酒により腹水の減少などの効果がみられています。


どうでしょうか?死と直結するという過剰な不安が、すこし薄らいでくださいましたでしょうか。
ここで、補足として前述の「代償」ということについて、お話しさせていただきましょう。

「代償性肝硬変と非代償静肝硬変」について

肝硬変は慢性肝疾患のなれの果てですから、ある日突然出現することはありません。肝硬変となった肝臓は、組織学的な変化に伴い機能も低下してきます。
しかし、正常な肝臓の機能はかなり余裕があるので、肝臓に残った力が身体の需要をみたしていれば(代償がきく状態であれば)、特別な症状は出ません。
このような肝硬変を「代償性肝硬変」といいます。腹部のもたれ感や倦怠感を訴えることもありますが、疾患に気づかないまま通常の社会生活を送っている場合もあります。
残っている肝機能が身体の需要に応じきれなくなったときに、肝硬変特有のさまざまな症状が出現します。このような状態を「非代償性肝硬変」といいます。典型的なものは、黄疸・腹水・肝性脳症・食道静脈瘤・発熱などです。
次にこれらの症状についてお話ししましょう。

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