家庭の医学

分裂病について(2)

家族と分裂病

第二次世界大戦後、母親の悪い養育が分裂病の原因であるという学説は、家族全体が問題であるという方向へ拡大していきました。
また、分裂病の母親のおよそ半数が、「風変わりで、精神病に近い状態であるか、明らかに分裂病であった」と結論し、父親も「きわめて有害で、病的な影響を家族や患者に及ぼしている」といった家族の相互作用によって、分裂病が発生すると提唱する者も現れましたが、現在では、それらのことが立証されず、家族相互作用理論は廃れています。

患者の親達から、「しっかり育ててきたのにどうして…」「育てかたが悪かったのでは…」等と自分達を責める言葉をしばしば耳にしますが、一人の子供が分裂病を発病しても、その他の兄弟は健康であるというケ-スでも分かるように、養育が関係しているのではないのです。
つまり、その子は、分裂病の気質を持っており、それが何らかの刺激によって発病したと考える方が正しいでしょう。
しかし、最も身近にいる家族の接し方により、精神が不安定となったり、再発を繰り返したりすることも否定できません。
そのため、家族はどのような態度で接するべきかをよく学び、実践することが大切です。

家族の接し方

  1. 病気のことを理解し、共感します。
    「警察が見張っている」「殺される」など、妄想様の発言をしたならば、それを最初から拒否するような発言は避け、「警察が見張っていると信じているのね。でも私には見えないし、いるとも思えない」というように、同意できないことをはっきりと言いいます。
  2. 同様の返答で「ああ、警察が見張っているね。でも大丈夫。私たちは何も悪い事をしていないのだから殺されることはないよ。もし、あなたが私の言う事をきかなかったら、きっと殺されるでしょうね」といった発言は、かえって混乱を招きます。その上、妄想的確信を強め、現実と自分の中でつくられている世界との区別をつけにくくしてしまいます。
  3. 自分の部屋に閉じこもったり、他の人々と接触を避ける行為がみられる時は、無理をして社会と関係を持つように働きかけるよりも、そっと見守り、必要な時にいつでも手を貸し、会話の相手をしてあげられるように、準備をしておくことが大切です。
    無理に外へ連れ出しても刺激過剰になり、ストレスや混乱を招くことにもなりかねません。
  4. 楽しいと感じられる余暇活動を見つける為に、ストレスにならない程度にいろいろなことに挑戦させることも大切です。
    家庭内でのお手伝いにしても、ストレスを高め、再発を招くのではないかという心配から、時に仕事を与える事をためらいがちです。
    本人が怠け者であると、家族のほうは余計に再発を懸念して、仕事があっても病気を口実に自立の可能性を遠ざけてしまいがちです。
    余暇活動や日常の簡単な仕事など、本人が自立の枠を拡げられるどうかをみるうえで大変有効なものですので、再発を恐れずに出来る範囲で見守るようにしましょう。
  5. 本人の望ましくない行動すべてを、病気のせいにすることはやめましょう。
    人間はすべて些細な欠点をいろいろ持っていること、そして、世の中には、完璧な人などいないのだといういうことを改めて思いおこす必要があります
    どんな人でも失敗はつきものです。人々が時にしくじるのはあたりまえだと思われているように、本人もたまに過ちを犯すものだと、受けとめてあげることが必要です。
  6. 本人の許されない行動とはなにかを知ることも大切です。
    攻撃的な、またはベッドでタバコを吸う様な危険行為は、決して許してはいけんません。
    そういった行為をした場合にどうするかは、事前に明確に決めておく必要があります。
    そして、家族は必要があれば、決めた通りに実行する心つくりをもたなくてはいけません。
  7. 家族が本人に引き込まれないようにすることも重要なことです。
    家族は本人の言動に敏感に反応し、自分の生活全てをそれにつぎ込んでしまいがちですし、また、そのような状況では自立の可能性を阻害しかねません。家族自身にも息抜きが必要です。
    たまには外出したり、趣味を見つけたり、同じような病気をもつ家族同士で話し合いができる場へ足を運んでみるなど、視野を広げるようにしましょう。
    そうなるまでには時間がかかるかもしれませんが、自分は自分であって、誰の人生でもなく、自分の人生であるということを忘れないようにしましょう。
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